第5話
ジオン公国軍
MS-06S シャア専用ザクⅡ
頭頂高:17.5m/全幅:9.2m(スパイク含む:9.7m)

月面のスミス海における史上初のモビルスーツ戦闘における功績を買われたシャア・アズナブルが、ジオン公国軍に士官として再任官し、モビルスーツのパイロットとなって与えられた機体。
MS-06 ザクⅡをベースに、シャアの要望によるカスタマイズが施されている。機体色は、本人のパーソナルカラーである「赤」が塗装されており、指揮官機であることを示すマルチ・ブレード・アンテナを配置。MS-06 ザクⅡと基本構造は同じだが、シャアの指示によって、より高い機動性を獲得するために推進ユニットのリミッターが解除されている。その結果、ジェネレーターや推進器の加熱などによる機体損傷のリスクは高まっているものの、MS-06 ザクⅡの持つ推進性能を限界まで使用することができるようになった。しかし、一般機に比べるとシビアな操縦技術が要求される扱いが難しい機体にもなっている。一般機の30%増しと言われる高推力を駆使した一撃離脱の戦闘を得意とし、印象に残る赤い機体を駆使して鮮やかに戦場を駆け巡るその姿から、後に「赤い彗星」と呼ばれるようになる。


ジオン公国軍
MS-06C ザクⅡ
頭頂高:17.5m/全幅:9.2m(スパイク含む:9.7m)

ジオン独立戦争開戦を目前に控え、ジオン公国軍ではMS-05 ザクⅠが制式量産化され、実戦に向けた配備が進められていた。しかし、実戦を含めたMS-05 ザクⅠの運用データをまとめた結果、流体パルスシステムのエネルギー伝達用の動力パイプを装甲内部に納めた影響によって機動性が損なわれ、機体の容積率も低く運用稼働時間が短くなってしまうなど、今後の戦争に向けて看過できない複数の問題が露呈することとなる。さらに、MS-05 ザクⅠの基本性能を向上させるべく改修しようにも、無駄を省いた余裕のない設計であったため拡張性も低いことが明らかとなった。そこで、MS-05 ザクⅠを生産性、整備性、開戦後に変化する戦況に応じた機体の拡張性などを踏まえた改修案を取り入れて再設計し、新たな主力MSの開発が行われた。動力パイプはMS-04 ブグと同様に機体外部に配置し、それに合わせて融合炉の出力の向上も図られることで機体の拡張性もアップ。こうして、再設計された試作機にあたるMS-06 ザクⅡが完成する。この量産前のMS-06 ザクⅡの試作機は、型式番号に「A」がつけられMS-06A ザクⅡと呼ばれた。MS-06A ザクⅡは、運用試験の結果、ジオン公国軍上層部が満足する性能と結果をもたらすものであった。
ザクⅡは直ちに制式採用が決定し、開戦に間に合うよう量産が開始される。改修が施されマスプロデュースドモビルスーツとして量産化された初期生産型のMS-06 ザクⅡは、型式番号の後ろに「C」が付けられ、「C型」と分類されることになる。MS-05S ザクⅠの防御兵装として導入されていた固定型シールドのショルダーアーマーも制式採用となり、以後、ジオン公国軍の主力機として大量に調達された。MS-06 ザクⅡシリーズは、このC型をベースにマイナーチェンジを重ねることになる。

ジオン公国軍
MS-06R-1A 高機動型ザクⅡ

ジオン公国軍の主力として活躍することになるMS-06 ザクⅡは、初期生産型となるC型、その後に登場するF型をはじめ、さまざまな戦況に合わせて運用可能な「汎用性」を求める形で開発が行われた。独立戦争開戦に向けて、汎用性の高いC型の量産体制が整いはじめると、ジオン公国軍は特定の戦闘状況に特化した、局地戦対応のMS-06 ザクⅡの開発を始める。その中で最も早い時期に完成したのが、MS-06R-1A 高機動型ザクⅡである。この機体は、汎用性を排除し、宇宙空間での戦闘に特化すべく、より高い機動性を求めて改良が施されている。背部の大型化したランドセル(バックパック)に大量に消費する推進剤をより多く積み込むことができるプロペラントタンクを増設。脚部には増速用の大型スラスターを3基ずつ計6基設置し、機動力の増強を図っている。この機体は、独立戦争初期の大規模艦隊戦となったルウム会戦において、かつてモビルスーツ開発にテストパイロットとして関わっていたガイア、オルテガ、マッシュら黒い三連星によって運用された。彼らは対艦戦闘用のフォーメーションを組んだ三位一体の攻撃を得意としており、役割に応じて異なる兵装も特徴となっている。チームを率いるガイア機は両肩にシールドを装備することで、バズーカの携行弾数が向上。射撃能力に優れるマッシュの機体は中・長距離射撃が可能なMS用対艦ライフル ASR-78を装備。そして、近接での格闘戦を得意とするオルテガの機体は、ガイア機とマッシュ機の攻撃の仕上げとして、ジャイアント・ヒート・ホークの直接攻撃でとどめを刺すという連携を行い、ルウム会戦において高い戦果を挙げることになる。

ジオン公国軍
MS-04 ブグ

モビルスーツ開発の始祖的な存在であるYMS-03 ヴァッフをもとに、生産性や整備性などは度外視し、より実戦的な要素を加味して誕生した試作機MS-04 ブグ。モビルスーツとしてのひとつの完成形とも言える機体であったが、その後、そのデータをもとに、より運用性や生産性のバランスをとったMS-05 ザクⅠが量産されたことによって、MS-04 ブグは独立戦争開始前にわずかな数のみが生産されただけで表舞台からは姿を消してしまう。しかし、MS-05 ザクⅠを凌ぐ性能を持つ機体であり、モビルスーツの生産機数もまだ少なかったため、一部のパイロットはMS-04 ブグをそのまま使用し続けた。モビルスーツ開発時のテストパイロットを務めたランバ・ラルもそのひとりである。ランバは、MS用バズーカA2型とヒート・ホーク、シールドを装備したMS-04 ブグを駆り、モビルスーツ部隊の指揮官として独立戦争開戦時のサイド2、ハッテの攻撃に参加した。

ジオン公国軍
GGガス注入艇

ジオン公国軍が展開した独立戦争における最初の大規模作戦は、地球連邦軍総司令部の所在するジャブローに向けてスペースコロニーを落着させる「ブリティッシュ作戦」であった。この作戦を遂行させるためには、スペースコロニー1基をほぼ無傷で手に入れる必要があった。ジオン公国軍は親地球連邦派のサイド2、ハッテの首都バンチ、アイランド・イフィッシュに狙いを定め、致死性の化学兵器「GGガス」を用いて全住民を死に至らしめるべく行動する。その際に使用されたのが、GGガスの運搬と注入を行うことができる特殊宇宙艇である。この宇宙艇は操縦やガス注入作業のコントロールを行う上部のユニットと、下部のタンクユニットで構成されている。上部ユニット部分は虫を思わせる特殊な形状をしており、タンク部と分離しての移動が可能となっている。そもそもこの宇宙艇はGGガス注入専用に開発されたものではなく、酸素をはじめとした、コロニー建設時などに使用する気体や液体の運搬、および現地での注入を目的としたものであり、それを軍用に転用したもの。そのため、乗員も想定外のGGガス漏洩でも被災しないよう特殊なノーマルスーツを着用していた。

アイランド・イフィッシュ

月に近いラグランジュポイント、L4に位置するスペースコロニー群、サイド2。そのサイド名は「ハッテ」と呼ばれており、アイランド・イフィッシュはその首都バンチの名称である。コロニーの形状は、三枚のミラーパネルが外部に配置され、河と呼ばれる採光部と陸地が交互の形成された「開放型」が採用されている。サイド2、ハッテは、スペースノイド出身の市民で構成されていながら政治的な立場は地球連邦派を表明しており、地球連邦軍から供与された軍備やコロニーで急造した兵装を装備する「ハッテ防衛隊」がコロニーの警備や治安維持を務めていた。ジオン公国軍にとっては政治的に対立するサイドであったため、独立戦争開戦時に宣戦布告、直後に攻撃を開始する。そして、アイランド・イフィッシュはジオン公国軍が計画していた「ブリティッシュ作戦」の標的となり、居住する全ての住民は致死性のGGガスによって命を奪われてしまう。ほぼ無傷でジオン公国軍の手に墜ちたコロニー本体は、地球連邦軍総司令部があるジャブローを破壊するための「コロニー落とし」に利用されることになる。外壁に耐熱コーティングが施され、移動用のブースターが設置されたアイランド・イフィッシュは、ラグランジュポイントから離脱し、地球へ向けて自由落下し、低軌道へと運ばれた。そして、3つに分断されて大気圏に再突入したアイランド・イフィッシュは地球の各地に降り注ぎ、人類史上最大の悲劇をもたらすこととなる。


地球連邦軍
マゼラン級宇宙戦艦

地球連邦宇宙軍の艦隊が保有する艦艇の中で、最大級の砲撃能力を持ち、攻撃の要となっている宇宙戦艦。主砲である2連装メガ粒子砲は、長い射程と高い火力を有しており、レーダーを駆使した索敵・捕捉能力との組み合わせによって、一年戦争開戦時では最強クラスの艦艇として艦隊の中心となって活躍していた。電子制御による防御兵装も充実しており、火力と防御力ではジオン公国軍の艦艇を圧倒する。レビル将軍の指示のもと、ジオン公国軍による独立戦争開戦に向けた動きに対し、地球連邦軍総司令部のある南米ジャブローにて新たに多数が建造され、宇宙軍艦隊を増強すべく地球脱出速度が可能なブースターを使用して宇宙へと送られた。その一方で、レーダー波などの電磁波を撹乱するミノフスキー粒子が戦場で用いられたことによって、得意としているレーダー索敵と連動した長距離射程を活かした艦砲の精密誘導攻撃にも支障が出ており、ジオン公国軍宇宙艦隊との会戦にあたっては偵察機であるカモノハシを使った戦場となる宙域の情報収集が欠かせない状態となっている。


地球連邦軍
サラミス級宇宙巡洋艦

地球連邦宇宙軍艦隊の主力として多数配備されている宇宙巡洋艦。艦首と艦尾に単装メガ粒子砲を、艦首にはVLS(垂直発射システム)を配備しており、高い攻撃性能を持つ。また、レーダーを駆使した索敵能力と、対空機銃やミサイルポッドなどの防御兵装も充実している。マゼラン級宇宙戦艦と比較して火力や攻撃力は低く、艦体サイズも小さいが、機動性が高いため戦況に即応した艦隊の陣形転換や移動が行いやすいという利点を持っている。主に艦隊の前衛に配置され、レパント級ミサイルフリゲートと共に、砲撃の中心となるマゼラン級宇宙戦艦による攻撃をサポートする。ジオン公国の独立戦争に向けた軍備増強に対し、南米ジャブローの地球連邦軍総司令部にてサラミス級も多数建造され、マゼラン級と共にブースターを取りつけて宇宙空間へと打ち上げられた。


ジオン公国軍
グワジン級宇宙戦艦
グレート・デギン


ジオン公国軍における最大級の大型宇宙戦艦グワジン級をベースにした、ジオン公国軍全軍の旗艦。戦艦ではあるが、公王であるデギン・ザビが座乗するために建造されているため、内装などの一部は戦闘を重視したものではなく、居住性が高く豪華な仕様となっている。その一方で、艦体としては座乗する要人の警護を重視しているため、攻撃性能や防御能力が高いのが特徴。艦体の上面には大型連装メガ粒子砲4基が配置されており、火力においてマゼラン級を凌ぐ。また、対空用連装メガ粒子砲は20基も装備されていることからも、乗員を守るための防御性能の向上が図られていることが判る。外装部には長距離移動を想定したタンクを取り付けるなど、戦闘を重視した通常の宇宙戦艦とは設計思想が異なっていることが見て取れる。他のグワジン級と異なり、艦首中央部に内部スペースを大きくとるためにバルジ状の張り出しがあり、そこにはデギン公王専用の部屋が設置されている。ひと目で旗艦と判るよう、バルジ部分には豪華な装飾が施され、そこを囲むようにジオン軍の階級章に似たデザインの黄色い巨大な紋章がマーキングされている。


サイド2、ハッテ
ハッテ防衛隊戦闘機
ヴォルホッグ


サイド2のハッテ防衛隊が所有する小型の宇宙戦闘機。「スミス海の戦い」に投入されていた月面攻撃機ホッグと基本構造を共有する機体であり、ヴォルホッグはコロニーの周辺宙域やコロニー内部の警備・パトロールに使用することを目的として、主翼や武装を変更したバリエーション機である。主翼には気圧内での高速飛行にも対応した垂直翼を取り付けており、飛行しながらでも口径の大きい砲弾を発射することが可能な無反動砲を装備している。限定された飛行能力しかなく、攻撃力が低い小型の機体であるため、ハッテを強襲したジオン公国軍のモビルスーツを迎撃すべく出撃したが、まったく歯が立たなかった。