宇宙世紀事始め Ⅲ その1
「ジオン自治共和国国防軍士官学校」

 U.C.0074、シャア・アズナブルと名乗る青年が、サイド3、ジオン自治共和国に入国し、同国のガーディアン・バンチに設けられた国防軍士官学校に入校した。

 同期生には、地球連邦に対する独立戦争の開戦準備を水面下で始めていたザビ家の末弟、御曹司ガルマ・ザビの姿もあった。
 第1寮から第7寮に分かれた全寮制で、学生達は二人一組で一室に寄宿。
 シャアは第3寮に入ったが、後にそこへ第1寮からガルマが移動して同室となっている。
 転寮など希望しても普段は通る要望ではないはずだが、ザビ家の威光に対する校側の配慮だったようだ。同室となったシャアとガルマは友情を深めていく。

 そのガルマの兄、ドズル・ザビが校長を務める士官学校の目的は、将来、国防軍を担う士官の育成にある。
 3年間の教育プログラムで、学生達は正規士官として勤務するのに必要な能力を育てられ、リーダーシップを発揮するために求められる知識を提供されることとなる。

 正規士官として必要な一般教養に加えて、各自が進む専門分野に従って、人体生理学、コンピューター科学、経済、軍事史、法律、管理、宇宙航法、宇宙飛行技術、国際関係論、政治学、歴史、行動科学、機械力学、航空工学、土木工学、電気工学などを選んで履修する。

 士官学校の運動科目は、フィジカルフィットネスの改良を行い、運動技能を教育すると共に、リーダーシップを体得するように計画されている。様々な運動科目を履修しなくてはならず、フェンシングやバスケットボールなどは、その履修科目の一部である。

 歩哨訓練や障害通過運動、射撃や砲撃訓練、重装備による行軍訓練などの基礎的な訓練を経て、3回生終了前には総合訓練として地球連邦駐屯軍との模擬戦を行って専修課程の履修度を判定するとしている。

 シャアとガルマも3回生時に模擬戦に参加するが、同じ頃、連邦軍艦が農業ブロックの一基を破壊する事件を引き起こした。
 発生したデブリが甚大であったため、学生達にも掃海任務が割り当てられた。
 微細デブリの回収作業中、シャアは掃海作業を行っている奇妙なモビルワーカーを目撃する。
 そのモビルワーカーこそ、ドズルの主導によって開発された、MW-01 最後期型だった。
 ガルマは、MW-01の次世代機こそ、モビルスーツと呼ばれる新型兵器であると、シャアに明かすのだった。

 この農業ブロック破壊事件は、ジオン自治共和国の国論を反連邦へとさらに傾けた。
 議会は完全独立の希求一色となり、サイド3のマザーバンチであるズム・シティでも民衆の暴発による破壊活動が発生していく。
 議会を統べる議長であるデギンは、その鎮圧に連邦軍が動くことを危惧する。

 実はガーディアン・バンチに所在する士官学校は、駐屯する連邦軍が死命を制する人質の意味合いも持っていた。士官学校にはコロニー出身の英才が在学し、コロニーの名家の子息も多く含まれていたのだ。そして、その敷地は、演習エリアを挟んで連邦軍の駐屯地と隣接していた……。

 U.C.0077——。
 シャアはガルマに歴史の歯車の回転を促す。それはのちに「暁の蜂起」と呼ばれる一大事件に発展するのだった。
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